儚さのなかで生きる
多くの実際的な出来事に取り紛れている間は、思考や感情が濁流のごとき勢いで生まれそして消えていく。
そのなかには書き残しておくべきだったことが多くあったはずだけれど、再び手に取るにはあまりにそれらは儚い。
何かを形にするためには余白が必要なのだ。
形になるよりも、ならないことの方がずっと多い。
書かれたことよりも、書かれなかったことの方が。
言えたことよりも、言えなかったことの方が。
私たちの具象化する力は斯くも偶然と限界に満ちている。
現前するものはなべて氷山の一角だからこそ美しい。
全てを残せないからこそ人の理性も悟性も感性も輝くのだ。
儚さのなかに生きる上では、現実の実際的な側面のみで己や世界を測る必要はなく、
余白を持って初めて見える何かや成し得る何かがあるのだと、
そんなことをこの須臾の季節の狭間で思っていました。