飛ぶ鳥の献立

珈琲と酒と本とぼんやりした何かでできている

頭の中は世界よりもずっと広い

 

少し前のこの記事がなかなか面白かった。

 

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期待に応えようと考えすぎて、完全に手も頭も止まってしまったんです。もともと自分の性格が頑固なのもあるのですが、「こんな中途半端なクオリティでは恥ずかしすぎて人には見せられない」「自分がなんとかしなきゃいけない」と思い込んで、ずっと1人で悩んでいました。

 

(中略)

 

「頭の中をみんなに見せてみたら?」と声をかけてもらったんです。要は完成していないからといって自分のところで止めてしまうのではなく、途中段階でも恥ずかしがらずに見せてよう、と。みんなからアイデアや意見をもらうほうが客観的な目線も入るので、よりクオリティも上がっていくことに気づきました。

 

(中略)

 

頭の中に閉じ込めている状態では何もしていないことと同じです。外に出さなきゃ何も伝わらないし、とにかく大小問わずアウトプットをしていくことがクリエイティブの作業では大事だと思います。

 

私も自分の仕事でこれに近いことをよくしているので、共感できた。

 

新しい企画を立てる時は、アイデアラッシュの段階でいったん人に見せてみる。

(営業とか他のプランナーとか、デザイナーさんやライターさんなど)

で、反応を見てみる。

 

ということをよくやる。

 

「面白い!」とか「あ、それいいね」と言ってもらえたら、大きくズレていないと判断して、その路線で細かく設計図を描く。

 

少し間が生まれたり、「ちょっとわからない」という反応だったら、捨てるか、表現を変えてみてまた反応を見る。

 

というプロセスが、企画のストーリーを組み立てていく最初の一歩として、とても大事だと思っている。

 

まだ思い付きの段階から人に見せることについては常に恥ずかしさを伴うけれど、引用記事にもあるように、自分の頭の中で抱えているだけだと、多くの場合、それが本当に人の心を動かすことのできる企画や表現なのかどうか確証が持てないままストーリーを作り込むことになってしまう。

 

そういう過程で生み出されるものって企画の幅が広がりにくいし、良い提案にならないことが多いなと、自分の経験や見聞を通して感じている。

 

(自分の直感で、「絶対これは面白いしお客様に刺さる!!」と揺るぎない確証を持つこともけっこうあるけれど、それでもやっぱり途中段階で人に見せてみることは大事だと思う)

  

なにより、聞いてくれる人が眼を輝かせて「それ面白いね!」と言ってくれるその瞬間。

人に自分の頭の中を見せてみることで、「私のひらめき」を「みんなの企画」に育てていくことができる最初の瞬間。

もしかしたらプランナーとして純粋に、一番楽しい時かもしれないなと思う。

 

自分の中に試行錯誤をとどめずオープンにすることで、頭の中を大きく広げていく事ができる面白さは、何もクリエイティブな仕事に限らず、どんなところでも感じることができると思っている。

たとえば、診断士の試験勉強でも。

受験生当時、まだ勉強法に迷いがあったころは、セミナーや勉強会に可能な限り参加してみて、空き時間などで合格者に個別に質問してみるということをやっていた。

合格者はどんなことをしていたのか、そこにどういう思考錯誤があったのか。

合格者の頭の中をなるべく見せてほしくて、いろいろな質問を投げかけていた。

そのときに親切に答えて下さった合格者の方々のおかげで合格できたのだと思う。感謝しています。

 

 

私の敬愛してやまない夏目漱石先生いわく、「三四郎」でのこのくだり。

 

「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より……」で一寸切ったが、三四郎の顔を見ると耳を傾けている。
「日本より頭の中の方が広いでしょう」と云った。

 

 

こんなことを明治の時代にさらりと書けてしまうその天才っぷりに痺れる。

 

もちろんここで語られている「頭の中の広さ」は、人に見せるも見せないも自由で、そもそもの人間というものの天分だという意味だと思いますが、凡人たる私のような者は、「頭の中は、誰かの頭の中とつながれる扉をたくさん持っている」というところで強くそれを実感してしまうのです。

 

 

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 たまに動物とも「あ、なんかつながってる気がする」と思う時があるよね。