狼と万有引力とミックスジュース
冬にひとりで行く動物園が好きである。
とりわけそれが曇り空の下なら完璧である。
というわけで行ってきました、天王寺動物園。
熱い柚子蜂蜜茶を入れた魔法瓶を携えて。
平日とあって、来客は理想のまばらさ。
こういう看板を見ると、ああ大阪だなあと思ってしまう。
ペンギンのフォルムのずるさたるや。
レッサーパンダのしっぽは、亀の子だわしにしか見えない。
一人心の中で山月記ごっこ。
トラの視線の先にあったのは、隣のご家族連れのお嬢さんが持っていた熊のぬいぐるみ。
お父さんがよく見えるように掲げてあげたら、
獣の本性を露わにしてきた。
ヌートリアだんご。
ムフロンと通天閣。
ムフロンは野生の羊の中でも一番小さい体を持つ種だそうです。
ムフロンAとBの間で衝突劇が始まった。
「おっなんやなんや」
「なんやなんや喧嘩か?」
大阪人らしいリアクションをするおっちゃんたち。
ジャガーを見て、「大阪のおばちゃんによう似とるわ」と言っていた大阪のおばちゃんたち。
主従が逆やで、と心の中で突っ込んだ。
鳥コーナーはけっこう好き。
上野動物園でも鳥コーナーで軽く一時間は過ごせる。
ペリカンってすごいデザインだよな、と見るたび思う。
こいつこのあとめちゃくちゃ飛んだ。びっくりした。
ホッキョクグマのおやつタイムが見られた。
細い筒の中に隠されたおやつも器用に取り出す。賢い子や。
うさぎの「駄目だこいつ…俺が守ってやらないと…」感は異常
狼を見つめながら、なぜ自分はこうして生き物が寄せ集められた場にひとりでいることにどうしようもなく癒されるのだろうか、と考えていた。
万有引力とは
ひき合う孤独の力である、
という一節を思い出す。
しかし、くしゃみが出そうになったのは二十億光年の孤独ではなく寒さによるものだったので、とりあえず喫茶店を目指すことにして、
熱い珈琲で寒さをしのぐはずが、思わずミックスジュースを頼んでしまったのでありました。