飛ぶ鳥の献立

珈琲と酒と本とぼんやりした何かでできている

尊厳は価値より深し

おとといの夕焼けは、誰かと一緒に眺めたくなるくらい美しかった。

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自分の人生は一言で言えばこれまでとても「遠回り」だったと思うのだけれど、 

そのおかげで、おそらく人よりも少しだけ多く、多様なバックグラウンドの方々に出会ってきた。

 

例えば、 

陽の光を浴びるようにして豊かな才をすくすくと伸ばして然るべき地位を築き上げた人、

陽の差さないような環境の中で静かに戦い続ける人、

多くの人が俄かには信じられないようなすごく特殊な能力を持つ人、

自殺を考えるほどの苦労を乗り越えて自分の居場所を作り上げた人、

世間一般で言う「普通」とは違う何かを負わされながらも自分なりの「普通」を諦めない人、

他にもたくさんの、人それぞれの物語があった。

そういう出会いを通して、物質的豊かさの有無や社会的地位の高低や知識の多寡といった類のものだけで人の真価は測れないということを学んできた。

 

そんな学びを得て、改めて強く思う。

人は本来、ただ生きているだけで尊厳を備えているものだけれど、その尊厳をより輝かせるのは何よりも、「慈愛の深さ」と「想像力の大きさ」なのだと。

能力や地位といった目に見える「価値」はむしろその具現化の一端、単なる氷山の一角に過ぎない。

どんな人も、そんな一端や一角では測れない、もっと深遠な存在だ。

何をするか、何を言うか、よりも、どう在るか、にその人の本当の尊さが現れるのだ。

 

世界にどんな影響を与えるかの前に、

世界をどんなふうに受け入れるのか、どこまで理解できるのか、がまず問われるのだと思う。

慈愛が深いほど受け入れる度量は深くなり、想像力が大きいほど理解できる領域は広くなる。

そして、受け入れ理解する世界の深さや広さこそが、世界を本当に動かしていく力になるのだと思う。

 

大した人間でなくて良いから、豊かに在れる人でありたい。

少なくとも、誰かと共にある時やその人を理解しようと思う時、その偉大なる氷山を少しでも深く潜っていける人でありたい。

そんなふうに思います。  

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