有限と勇気
この記事を読んで、美しい文章だなあと感銘を受けた。
詩や句や歌を詠む人の書く文章が私はとても好きなのだけれど、
そのなかでもこの記事の、特に後段は輝きに溢れているなあ、と思った。
なんでもそうだが、はじまったら・おわる。どんなに緊張した場でも、吐き気がして卒倒しそうな場でも、とにかく、はじまったら・おわる。
(中略)
要は、〈はじめられるか・どうか〉なのだ。〈そこに・そのとき・ちゃんといられるかどうか〉だ。
この、「はじまりとおわり」の関係。
おわりがあるからこそ、はじまりがあるのだということ。
そこにこそ、私たちの営為の本質があるのかもしれないと思う。
やりたいことを心に描いた時、 私はいつも、
「どんなふうに終わりたいか」を自分に問いかける。
おわりを見つめることで、はじまりと向き合えるように思うからだ。
やりたくないことをやらなくてはならない時、私はいつも、
「やれば終わる」と呪文のように唱えながら手をつける。
はじめない限り、そこからは逃げられないとわかっているからだ。
どれほど魂が輝くようなことでも、どれだけ五臓六腑が冷えるようなことでも、
生きていることそのものまでも、
はじまったら必ず、おわる。
はじまりの地点に、きちんと立つ。
簡単なようでとても難しいことだと思う。
けれど己の意思と存在を以って「はじまりとおわり」を引き受ける時、
いつもよりも、少し深い世界に降りていけるような気がする。
それこそが、はじまりに立つ勇気の源泉なのかもしれないと思う。