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個と組織の両方を重んじることは斯くも深い

すこし日が開いてしまった。

仕事が楽しかったり飲んでいたりしていたのもあるが、精神的に閉じ籠っていたい数日間でもありました。

 

そんなここ数日ではあるが、お会いした何人かの人から文章をお褒めいただいた。

ありがとうございます。

なかにはファンだと言ってくださる方もおられて、驚きと恐縮でいっぱいです。

粗品に過ぎぬ差し出しものに、それ以上のものを返してくださる方々の慈しみ深さとそれを表現することを惜しまない高貴に救われてばかりであります。

自分では相変わらず下手だと思うけれど、たゆまず己の文筆道(というほど大したものではないけれど)を歩んでいこうという励みをいただきました。

 

今日はゆるゆると書きます。

 

今年から、とあるボランティア活動に参加することになった。

理念に共感を覚えたり自分のこれまで経験してきたことが生かせそうな活動内容であったので参加することを決めたのだが、先日、その活動の中でとても感銘を受けた出来事があった。

 

とあるプログラム直前のミーティングで、参加者の一人が、「自分は正直に考えるとプログラムの中でおそらくこういう行動をとってしまうと思うのだけれど、それは果たしてやって良いことだろうか?」という趣旨の質問を主催者側に投げかけられた。

その行動についてはかなりセンシティブな情報を含むので具体的には書けないのだが、非常に回答の難しい質問であった。

 

その人の想いに立てばそれはもちろん肯定したいことだが、翻って受け取る側との関係性やその立場を想察すれば、それはその人自身の誠実さという本来の美しい部分があるがままに伝わり切らない可能性も高いのではないか?

と私は思った。

どちらの面から照らせど、是とも否とも簡単に言い切って良いようなものではなかった。

 

 

まだ20代とお若い主催者の方は、すこし考えたのち、このような趣旨のことを答えた。

 

「ご質問ありがとうございます。

 まず、そう行動したいと思うことは、〇〇さんのお気持ちとして正しいと思います。

 そして、それを判断するのは僕たちではなく、『それによってどうなってほしいのか』だと思います。

 〇〇さんが、これから僕たちがする活動の目的に沿って、それがベストな方法だと思うのであればそうするべきだと思います。

 ですので、その判断は〇〇さんにお任せします。どちらの選択でも僕たちは尊重します。

 そのうえで、ここからは僕の場合の話をします。

 僕が〇〇さんの立場であれば、このように考えて、このように行動するかな、と考えます。

 ですがこれは、あくまで僕だったらどうするかというお話ですので、〇〇さんがご判断される際の参考になれば、と思います。

 〇〇さんにお任せします。」

 

私は彼のこの回答にたいへん感銘を受けた。

同時に、こんな美しい問答を聞けただけでも、この活動に参加してよかったと思った。

 

(実際には、もっとたくさんのものを享受していますが)

 

野暮だとは思うが、この回答のどこが素晴らしいかを私なりに解説すると、

まず最初に、勇気をもって質問してくれた行動を、感謝を以って受け止めていること。

次に、その人の立場とそれによって形成された意思を尊重していること。

そして、個の尊厳を守るという大前提に立ったうえで、判断基準ーすなわち、大切なのは、What:何をするか、ではなく、Why:なぜそれをするのか、So What:それによってどうあってほしいと思うのか、であるという原則を明確に示していること。

その上で、「自分が同じ立場ならこうする」という具体性を示していること。

そして最後にもう一度、あなたの意思を尊重します、という一番伝えたいメッセージに立ち返っていること。

 

20代という若さで、こんな難しい問いに、こんな美しい回答をできる人を私はほとんど知らない。

なにより高潔さを感じたのは、それが理性の「あるべき」のみによって形成された答えではなく、彼自身もさまざまな立場同士の葛藤をめぐって苦しみ悩んできた過去があるからこそ、情感の「こうありたい」という人間性を以って回答していることが伝わってきたところだ。

 

個を尊重することと、組織としてのパフォーマンスを最大限に発揮することはけっして単なる二項対立ではない、ということを改めて実感できる出来事であった。

 

その後のプログラムでは、質問をされたその方ご自身の判断のもとで、周りから見ても素晴らしいと思える行動を取られていた。

なによりも、その方がとても良い表情をなさっておられたのが私には嬉しかった。

 

そんなエピソードがいろいろある、良い活動に参加しております。

新しい職場もそうだが、昨年よりもいっそう、人の間に学ぶことの多い一年になりそうである。